天然鮎の一生

天然の鮎が食卓に並ぶまで

昔と比べ、今は食品に関する安全と品質管理が非常に重要視されています。まずは天然鮎が生まれてからどのようなルートをたどり、どんな道を通って皆さんの口へ運ばれているのかお伝えします。一般的に秋ごろに河口付近で岩場の陰に産み付けられた卵たちは夜の間にふ化します。この時の小魚たちは川を登る泳力が無いので、海のほうへと流れに乗って進んでいきます。寒い冬を海へ過ごしますが、たくさんの外敵がいる海中で生き残るのは半数以下です。そんな中を生き延びた鮎たちの体は7~8センチほどに成長します。その後、春の温かくなる時期に川を登り始めます。これまでは水中のプランクトンを食べていましたが、川に入ることで岩に生えている藻やコケも食べるようになります。この時に良質な水でたくさん動いて育つことで身が美味しく引き締まり、脂が乗り、香り高い体になっていきます。そして漁が解禁になると漁業権を持つ漁師たちが、刺し網や投網などいくつかの方法で鮎を捕ります。

その後は、生きたまま市場へ運ぶこともあれば、氷締めをするもの、焼いたり、干物にするもの、フレークや佃煮などへ加工するものと分かれていきます。いずれも、鮎の状態に応じて必要な処理をしながら卸市場へと並び、時には仲介業者を通しながら街の魚屋さんやスーパー、飲食店へと運ばれていきます。最近では、生産者から直接消費者が購入できる仕組みもあります。生産者だからこそできる鮎を使った加工品などもあり、子供からお年寄りまで食べる人それぞれにあった品物を好きなように選べるようになったのは良いことです。特にお子様が、切り身の状態ではない魚に触れることができるのは貴重な経験だと思います。綺麗な水を好む鮎ですので、近年の海洋汚染や河川の汚れにより昔よりも数が減ってきています。それに比例して価値が高くなってきてはいますが、それでもたくましく成長した天然の鮎は絶品です。