日本各地に生息している鮎は「清流の女王」とも呼ばれます。俳句の世界においては夏の季語となっているほど、古来より日本人に愛され、親しまれている川魚です。そんな鮎には、たくさんの呼び名があることをご存知でしょうか。
鮎はナマズ?
日本語では「鮎」と書いてアユと読みますが、実は「鮎」という漢字は中国語では“ニエン”と読み「ナマズ」のことです。第14代神功皇后が、アユを使って戦況を占ったところから、魚ヘンに占と書く鮎をアユと読むようになったと言われています。日本書紀の記録には、神功皇后が針に米粒をつけて川に垂らし神意を占ったところ、香りのよい魚が獲れ、以後はその魚に「鮎」という漢字をあてて「アユ」と呼ぶことにしたと書かれています。
鮎という名前の由来は?
成長とともに場所を移動することから「歩む(古語ではアユル)」がアユの語源という説があります。他にも“ア”は小さい、“ユ”は白いという意味があるので小さく白い魚という意味でアユとなった、アイヌ語で矢を意味する「アイ」が訛ってアユになった、神前に供えるために「饗(あえ)」に由来しているという説などなどの説もあります。
「年魚」と書いてアユとも読みます。鮎の寿命が1年であることや、中国語では鮎も年も同じ音でニエンと読むためなどの理由だと思われます。漢名は「香魚」で、香りの良い魚という意味です。確かにアユにはスイカやキュウリのような青々しさのある独特の香りがあります。育つ川、食べているコケによって香りが違い、それぞれの地域によって独自の香りがあるようです。ちなみにアユはコケを食べる草食の魚なので内臓まで食べることができます。「銀口魚(銀色に光ることから)」「細鱗魚(ウロコが小さいから)」などの漢字をあててアユとも読みます。これだけ様々な呼び方があるのは、アユが日本中で愛されている証拠です。地方によっては「チョウセンバヤ」「アイナゴ」などと呼ばれることもあります。