日本の養殖鮎と地域性

養殖場のこと

養殖の鮎は、食用目的の場合と遊漁目的の放流用の稚魚養殖があります。消費者に届く鮎は、食べられる大きさ(=成魚)になるまで飼育されています。養殖している管理体制に左右されますが、天然物と比べると脂が乗って栄養価が高いのが特徴です。生産から市場までの一般的な流れは、自然に近い環境となるよう大量の水と水流を用意します。一定の生産量を確保できるよう数を多く飼育するケースや、飼育数を少なくして脂肪を付けすぎないように身を引き締めるケースもあります。これは食べる人の好みにもよるのでどんなものでも需要があります。飼育時の適温は15~25度を保ち、長方形や丸い形の生け簀を自由に泳がせます。以前はエサとしてカイコの蛹を粉末にしたものや魚を練ったものが使われていましたが、最近は魚粉やすり身が多いです。このエサも地域の特産を使うなど個性が出てきました。衛生面では、こうしたエサの食べ残しなどで生け簀の水質が悪化することによる感染症が起きたり、鮎たちが大きくなるにつれ生育密度が上がりそれによってストレスや共食いなどの可能性もあります。水質悪化が少ないエサや、生け簀の水質を綺麗に保つための対策をし、密度の管理もしっかりと行うことで品質の良さを保つことが大切です。

 

特産品の鮎

地域ごとの特徴を生かしたブランド鮎も有名です。徳島県では「すだち鮎」と言って、徳島県の特産品すだちを使ったお酢やハチミツ、リンゴ酢やビタミンをエサに混ぜています。すだち酢はクエン酸を豊富に持っているので、肉質の良い鮎になっています。愛知県では「ハーブ鮎」があります。数種類のハーブ(ジンジャー・ガーリック・シナモン・オレガノなど)をエサに混ぜて飼育しています。鮎本来が持つスイカのような香りとともに霜降りのような身を持つ鮎です。和歌山県では「若武者鮎」があります。紀州の代表でもある梅のエキスをエサに混ぜ、一級河川である紀ノ川の水と地下水を使い水車の力で自然に近い水流を作り出しています。養殖鮎ですが、天然鮎と同じような黄色い斑点が見られるのが特徴です。他にも地域ごとに特色溢れる鮎がありますので、ぜひご自分の好みに合った鮎を探してみて下さい。