天然の鮎を取り戻すための全国各地での取り組み

天然の鮎の数はなぜ減ったのか

1990年代から鮎の漁獲量が全国的に減っています。はっきりとした原因はわかっておらず、東日本と西日本で鮎の漁獲量が減少するスピードが違うのが興味深いところです。元々は西日本のほうが漁獲量が多かったのが近年では完全に逆転。暖かい西日本で鮎が減って、寒い地域が多い東日本の鮎はそこまで減っていないので、地球温暖化が原因とも考えられています。

高知県奈半利川

奈半利川では昭和30年代にダムが3つ作られたため、手つかずの自然な状態で水が流れるのは源流部だけとなってしまいました。ダムは土砂までもせき止めてしまうため、ダムの下流の川底の砂利石がなくなったことで鮎が産卵できなくなり、天然の鮎が減少したと考えられています。鮎が卵を産めるように川に砂利を入れたり、親となる鮎を保護する活動をはじめ、夏から秋にかけて投網の禁漁区を作るなど数々の対策をした結果、2009年以降は安定した天然の鮎の遡上量が得られるようになったのです。同じ高知県内の河川の中で奈半利川の遡上量が多かったのは、対策の効果が大きかったと言えるでしょう。

岐阜県長良川

日本一になったこともある岐阜県内での鮎の漁獲量は、ピークの時の8分の1にまで減少してしまい、鮎王国を復活させるための動きが盛んになっています。病気に強い岐阜県産の鮎の稚魚を増やすことを始めたほか、長良川の上流に保水力があると言われている広葉樹を1万本以上植えるなど、川を守る山の保水力を強化する活動も始めました。

中国地方の江の川

江の川では、最盛期には約300トンあった鮎の漁獲量が平成に入って30トンにまで激減し、その原因が天然の鮎が遡上する量が減ったことだと言われています。江の川中流にある浜原ダムが邪魔になって鮎が産卵期に降りられず、産卵できないことが親魚が少ない理由になっていると判断。まずは浜原ダムの遡上制限を行い、ダムより下流で天然遡上量を増やしてから上流に遡上させるというプランを立てたのです。それと同時に下流で鮎が産卵しやすいように整備したり、産卵期の禁漁を行うなどした結果、天然の鮎の数が増えてきています。