鮎は鮭と同じように、川から海へ、海から川へと移動する魚です。日本では1万年以上前から食べられていた魚で、日本最古の歴史書「古事記」の中では『年魚』に関する記載があります。年魚とはアユのことで、1年で一生を終えることから年魚という漢字があてられたと言われています。
鮎の一生
鮎は年魚とも書きます。その名の通り1年で寿命を迎える魚です。川でふ化した鮎は海に流れ着き、稚魚の間を海で過ごします。プランクトンをたっぷり食べて5~7㎝ほどに育つと、3~4月頃にかけて河口から遡上(そじょう)を始めます。最初は昆虫なども食べますが、成長するにつれ川底の石についたコケ(アカ)を食べるようになっていきます。わずか1年の間に成長しなければならないため、豊富に栄養を摂る必要がありますが、その点コケは理想的な食糧です。コケといっても正確には珪藻(ケイソウ)や藍藻(ランソウ)のことで、タンパク質や脂肪分が豊富に含まれています。成熟すると体長20~25㎝くらいになりますが、なかには30㎝近くまで育つものもあります。秋に産卵期を迎えると腹の部分がオレンジ色になります。これを婚姻色とよびます。9月~10月に産卵した鮎はオスもメスも一生を終えます。
なぜ1年で死んでしまうのか?
鮎と同じように川と海を行き来する鮭の寿命は3~5年、長いものは7年も生きます。鮭は海からすぐに遡上せず、河口付近にとどまり体を真水に慣らしてから川へ向かうのに対し、鮎は海からすぐに川へ遡上します。さらに、鮎はプランクトンや昆虫を食べていますが、遡上する途上で藻を食べる草食へと変化します。それに伴い口の形は変わり、体も肉食から草食へ変化させます。このような大きな変化が短期間でおこるのですから、鮎の体には相当大きな負担がかかっていると考えられます。また、鮭が雑食なのに対し、鮎は藻しか食べません。気温が低くなる冬には藻が成長しませんから、冬がくると鮎の食糧は尽きます。ですから鮎は冬を越すことができず、産卵すると命を落とすのです。