初夏に解禁を迎える鮎は夏の風物詩。縄文時代から食べていた鮎は、日本人にとって特別な魚です。かつては、鮎の大部分は天然でしたが、現在は天然の鮎は釣り人が楽しむか、料亭などへ出荷されてしまうため、ほとんどの家庭で食卓に上るのは養殖の鮎です。天然の鮎と養殖の鮎にはどんな違いがあるのでしょうか。
養殖と天然の鮎・美味しいのはどっち?
天然の鮎はコケを食べるため、スイカのような香りがします。「香魚」と呼ばれるのはそのためです。海から川へ遡上し、たった1年で長距離を移動し急激に成長します。人間でいうならばアスリートのようです。運動量が多いため身がしまっています。
養殖の鮎は運動をせずに脂肪分を多く含んだ合成飼料を与えられています。ですから脂肪分が豊富です。味、香り、食感が天然の鮎とは全く違います。脂がのっているので美味しいと感じる人もいるようですが、人間に例えれば、運動せずにソファーに寝転がって、毎日ファーストフードを食べているようなものですから、美味しいかどうかは疑問です。ところが、近年は養殖鮎のレベルを上げるためにさまざまな工夫をしています。無添加の配合飼料やコケに似たエサを与えることなどで味を改善し、天然の鮎に遜色ない養殖鮎が増えてきました。内臓まで食べられる養殖鮎もいるほどで、どちらが好きかは好みによって分かれるようです。
養殖と天然の見分け方
一般的に養殖は顔が丸く、天然の遡上鮎は顔がシャープです。養殖の鮎は固形エサを食べるだけなのでアゴが発達しませんが、天然の鮎は石についたコケを削り取って食べるためアゴが発達するのです。また、天然の鮎は成熟するにつれ胸元やヒレのあたりが黄色からオレンジ色になってきます。ですが、養殖の鮎にはそのような特徴は見られません。さらに、ひっくり返して下から見ると、アゴの下に下顎側線孔という針でついたような穴が開いています。天然はこの穴が規則的に左右対称4つずつ並んでいますが、養殖の鮎は不規則です。ただし、天然種苗を放流している場合はほぼ見分けがつきません。